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【コラム】平和安全法制の国会審議スタート---実のある実質審議を!
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平和安全法制の国会審議がスタートしました。
一部野党は国会提出前に安倍総理が米国議会で今夏までの法案成立に
言及したことを問題視していますが、そもそも集団的自衛権の一部容認を
含む安保法制の早期成立は先の衆院選でのわが党の公約であります。
また、昨年来安保法制構築については20回を超える与党協議と安保法制
推進本部など党本部での活発な議論を経ており、国会の場でも安保法制懇
以来、のべ300名を超える議員が質疑を行っています。
国会軽視とか密室のみで決めたとの批判が当たらないことは明らかです。
今回の法制度は自衛隊法案など10本の関連法案を一括した
「平和安全法制整備法案」と主として後方支援を扱う「国際平和支援法案」の
2本建てで構成されています。
グレーゾーンからPKO、後方支援、武力行使に至るまでの切れ目のない
安全保障体制を構築するため相互に関連する法案は一括して提示し、
全体像を示すことが適切です。
また、これ迄テロ特措法、イラク特措法など個別法で逐一対処してきた
後方支援については恒久法として平和協力支援法案の形で提示しています。
政府側には可能な限り国民に分かりやすい説明を求めたいですし、
質問者は国民のさまざまな関心事に適切に答える骨太の質疑展開を期待します。
◆国会対策副委員長 衆議院議員 寺田 稔◆
切れ目のない「平和安全法制」に関するQ&A
【Q1】なぜ、今、平和安全法制の整備が必要なのですか?
【A】
国民の命と平和な暮らしを守ることは、政府の最も重要な責務です。
わが国を取り巻く安全保障環境は、一層厳しさを増しています。
わが国の安全を確保していくには、日米間の安全保障・防衛協力を強化する
とともに、域内外のパートナーとの信頼及び協力関係を深め、その上で、
あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする法整備を行うことが必要です。
これにより、争いを未然に防ぐ力、つまり抑止力を高めることが必要だからです。
また、これまでも、周辺事態法やPKO法等を含めた現在の法律について様々な議論があり、
その改善方法等について検討が進められてきました。
今回の平和安全法制は、そのための切れ目のない法制を作るためのものです。
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【Q2】わが国を取り巻く安全保障環境の変化とは、具体的にどのようなものですか?
【A】
わが国を取り巻く安全保障環境は、一層厳しさを増しています。
東アジア、中東、ヨーロッパで様々な不安定要因が現実のものとなっています。
具体的には、パワーバランスの変化があり、中国の急速な台頭と米国の
影響力の相対的な変化が見られ、特に中国の対外姿勢と軍事動向等は
わが国を含む国際社会の懸念事項となっています。
また、大量破壊兵器や弾道ミサイル等の軍事技術が高度化・拡散し、
北朝鮮は日本が射程に入る様々なミサイルを配備しており、核開発も
行っています。
さらに、技術革新の急速な進展もあり、国際テロの脅威や、海洋、宇宙、
サイバー空間におけるリスクも深刻化しています。
脅威が世界のどの地域においても発生し、わが国に直接的な影響を及ぼし
得る状況になってきているのです。
このような状況の中、日本の安全を守るためには、日本が国際社会の中で
一層大きな役割を果たすとともに、日米同盟を強化し、
域内外のパートナーとの信頼及び協力関係を深めなければなりません。
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【Q3】今回の平和安全法制の全体像を簡単に教えて下さい。
【A】
切れ目のない平和安全法制を整えることにより、「わが国の平和と安全」
及び「国際社会の平和と安全」を、より一層確保できるようになります。
具体的には、わが国の平和と安全を守るために、武力攻撃には至らない
グレーゾーンの事態から我が国に対する直接の武力攻撃に至るまで、
切れ目のない対応ができるようになります。
また、わが国の平和と安全のためには、国際社会の平和と安全も重要です。
これまでわが国に要請があっても、十分に対応できないといったことが
ありました。
今後は、国際社会が協力して脅威に対応しようとするときに、わが国も
その一員として、後方支援ができるようになります。
さらに、これまで20 年以上の実績があるPKO活動を充実させ、有志国家で
行うような国際的な平和協力活動にも参加できるようになり、
内戦の後で国づくりに努力しているような国をさらに助けられるようになります。
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【Q4】今回の平和安全法制で日米同盟はどうなるのですか?
【A】
昨年7月1日の閣議決定に述べられているとおり、わが国及びアジア太平洋
地域の平和と安全のために、日米安全保障体制の実効性を一層高め、
日米同盟の抑止力を向上させることにより、武力紛争を未然に防ぎ、
わが国に脅威が及ぶことを防止することが必要不可欠です。
平和安全法制の整備は、新たに策定されたガイドラインと相まって、
平素からの日米の防衛協力を強化し、わが国の安全だけでなく、
アジア太平洋地域の平和と安定に資することにもなると考えます。
また、今般の平和安全法制をめぐる日本の取組みについては、米国も支持、
歓迎する旨をたびたび表明しています。
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【Q5】なぜ、集団的自衛権の行使を認めることが必要なのですか?
【A】
これまで政府は、「武力の行使」が許容されるのは、わが国に対する
武力攻撃が発生した場合に限られると考えてきました。
しかし、わが国を取り巻く安全保障環境が根本的に変容していることを
踏まえれば、今後、他国に対する武力攻撃であったとしても、その目的、
規模、態様等によっては、わが国の存立と国民の命と平和な暮らしを脅かす
ことも現実に起こりえます。
そのとき、わが国の存立と国民の命と平和な暮らしを守るためには、
一定の範囲で集団的自衛権の行使を認めることが必要です。
わが国が行使する集団的自衛権は、他国に対する武力攻撃をきっかけと
するものではありますが、わが国を防衛するための自衛の措置を目的と
するものです。
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【Q6】「積極的平和主義」とは何ですか?今回の法整備とはどういう関係ですか?
【A】
「積極的平和主義」には、人道支援、保健分野での協力、ODA、
軍縮・不拡散の推進、「法の支配」の強化、「人間の安全保障」の実現への
取り組みなど、あらゆる外交努力が含まれます。
今回の法整備に含まれているPKO活動などの国際的な平和協力活動も、
「積極的平和主義」の一環です。
例えば、南スーダンでは、平和を創り出す日本のPKO活動と経済協力が
相まって、国づくりの支援をしています。
このように、「積極的平和主義」とは、消極的ないわば「縮み志向」の
平和主義ではなく、ODAをはじめとする外交努力や自衛隊による活動などを
含め、世界の平和と安全を確保しつつ、自国の平和と安全を確保しようと
する能動的な取組みです。
この「積極的平和主義」は、米国はもとより、アセアン諸国、欧州、中東、
アフリカ、中南米の圧倒的多数の諸国から、大きな支持を得ています。
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【Q7】わが国は軍事的分野ではなく、非軍事的分野で国際社会に貢献する
ことで、わが国の平和と安全を確保できるのではないですか?
【A】
資金協力や物資援助等を含めた非軍事的分野での様々な貢献を行うことは
当然のことであり、今後もしっかりと取り組んでいきます。
他方、湾岸戦争をきっかけに、国際貢献・人的貢献の必要性が高まり、
国際社会と共に我が国も20年以上にわたり自衛隊による貢献を積み重ねて
きました。この場合に、わが国が行うのは「武力の行使」ではなく、
「武力の行使と一体化」しない範囲での支援活動です。
このように、各国が国連決議の下で、一致団結して国際社会の平和と安全の
ために対応する時、わが国も国際社会の一員としての責任を果たし続ける
ことが重要です。
わが国だけがそのような責任を果たさないということは適切ではないと考えています。
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【Q8】日本が「戦争をする国」になるのではないですか?
【A】
日本を「戦争をする国」にはしません。そのためにも、わが国を取り巻く
安全保障環境が一層厳しくなる中で、国の存立を全うし、国民の命と平和な
暮らしを守るために、外交努力とともに憲法の範囲内で安全保障努力を行う
ことにより、紛争を未然に防止したり、その拡大を防止して早期に
終結させるといったことを、これまで以上に重視していきます。
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【Q9】今回の平和安全法制は「戦争立法」ではないのですか?
【A】
日米安全保障条約を改定した時も、周辺事態安全確保法制定の時も、
「戦争に巻き込まれる」といった大変な反対運動がありました。
しかし、これらによって我が国の平和がより確固なものとなり、
戦争に巻き込まれる可能性はより低くなりました。
今回の切れ目のない平和安全法制の整備により、わが国の安全保障をより
盤石にするとともに、日米同盟をさらに強固にして抑止力を強め、
必要な時には紛争を未然に防止したり、その拡大を防止して早期に
終結させるといった活動に加わることにより、わが国の平和を守ることに
なると考えています。
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【Q10】将来、徴兵制が採用され、子供や若者が戦場に駆り出されるのではないですか?
【A】
全くありえません。憲法18条は「何人も(中略)その意に反する苦役に
服させられない」と定めており、徴兵制ができない根拠になっています。
自衛隊は「志願制」であり、徴兵制が採用されるようなことはありません。
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【Q11】集団的自衛権の行使を認めれば、他国の戦争に巻き込まれるのではないですか?
【A】
憲法上許されるのは、あくまでわが国の存立を全うし、国民の命と平和な
暮らしを守るための自衛の措置だけです。もとより、外交努力による解決を
最後まで重ねていく方針は、今後も揺らぎません。万が一の事態に備えて
自衛の措置を十分にしておくことにより、かえって紛争が予防され、
日本が戦争に巻き込まれるリスクは少なくなっていきます。
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【Q12】今回の法整備で集団的自衛権を行使できるようになれば、
米国からの要請を断れなくなるのではないのですか?
【A】
平和安全法制の整備は、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために、
わが国として主体的に取り組んでいるものです。わが国の存立と
国民の命や平和な暮らしに関係のない集団的自衛権の行使の要請が、
仮に米国からあったとしても、断ることは当然のことです。
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【Q13】「議論を広く、丁寧に尽くしたうえで~」と言いますが、議論は
尽くされておらず、国民の理解が得られないのではないですか?
【A】
平和安全法制をめぐる検討は、第1次安倍政権の時から有識者懇談会などを
含め、足かけ9年にわたり具体的に行ってきました。また、国会では
集中審議を含め政府の考え方を説明してきました。自民・公明両党の
「安全保障法制整備に関する与党協議会」の開催も25回におよび、
その都度、資料を公開して透明性の確保にも努めてきました。
自衛隊が活動できるようにするためには国内法が必要であり、立法の過程に
おいて、国会承認を含め具体的な手続きを定めることとなります。
今後も国会審議を通じて多くの国民の意見を反映した広範な議論を行い、
その中でさらに国民の理解を得ていきたいと考えています。
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【Q14】今回の法制によってわが国は平和から遠ざかるのではないですか?
【A】
いかなる紛争も力ではなく、国際法に基づき外交的に解決を目指すべきは
当然です。安倍総理は法の支配の重要性を、国際社会に対して繰り返し
訴えてきました。その上での万が一の備えが大事であり、この備えこそが
万が一を起こさせないようにする大きな抑止力となります。
また、やむを得ない場合には、国際社会と連携して紛争を未然に防止したり、
その拡大を防止して早期に終結させるなど、必要な行動をとることができる
ようにしておくことが、わが国の平和につながっていくものと考えます。
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【Q15】戦後日本の大前提である平和憲法が根底から破壊されるのでは
ないですか?平和主義は変わるのですか?
【A】
先の大戦に対する痛切な反省を経て掲げられた憲法の平和主義の理念は、
今もこれからも全く変わることはありません。その平和主義の理念の下で、
これまでもわが国は時代の変化に対応しながら最善を尽くし、外交、
安全保障政策の見直しを行ってきました。平和国家としての日本の歩みは
これからも決して変わりません。